チャンラン
 vCJDの輸血による伝播の危険性に関して疫学的にアプローチした論文と、輸血で感染したかもしれない一例の論文。
 これまで、sCJDの血液伝播に関する調査は行われてきており、まだその例は見つかっていない。vCJDでも調査を行った。
その結果、vCJD患者の血液由来の製品が55例投与されていることが明らかになった。そして、その中の一人がCJDの症状を示して亡くなっており、vCJDが血液伝播した可能性を示した。
 sCJDが散発的に起こるのは100万人に一人程度だが、疫学的な計算によると、vCJD患者由来の血液を輸血した人間では1万5千から3万人に一人程度感染することになるらしい。
また、輸血で感染したかもしれないもう一つの例では、その人は神経症状を示さずに亡くなったのだが、脾臓扁桃にPrPScの蓄積が見られた。この人は129番アミノ酸が高感受性のMホモではなくMVヘテロであったことが特徴的である。
注)これまで、ウシからヒトへと感染したと考えられるvCJD患者は100%Mホモの遺伝子型だった。
今回の例は、ヒトからヒトへの伝播であるため、ヘテロ型なのに感染したかもしれない、ということ。

佐々
 Trim5αがLv1やRef-1と同様に、カプシドに作用することでHIV-1とMLV感染を抑制することを確認した論文。
 最近、アカゲザル由来のTrim5αがHIV感染を抑制することで話題になったが、感染防御機構に関しては分からないことが多い。本論文では、各種霊長類由来のTrim5αタンパクをクローニングし、HIV-1、(N,B)MLVへの防御能を調べた。
 サル由来のTrim5αをヒトの細胞に発言させると、HIV-1感染を防御した。
 で、HIVは細胞内に入ると、カプシドの周りに細胞のシクロフィリンAタンパクを結合させて複製までこぎつけるのだが、サル類ではこのカプシドとシクロフィリンの複合体をターゲットとするLv1タンパクにて感染防御が成立している。Trim5αのHIV-1に対する防御能もこれと似ていた。
 また、ヒトのMLV感染防御因子であるRef-1はカプシドそのものをターゲットとするのだが、MLVに対してTrim5αにはその機能もあることが確認された。
また、RNAiによってTrim5αノックダウンを行うとN-tropic MLVの感染を優位に増加させた。(B-MLVは差がなかった)
 これらの実験より、Trim5αはLv-1とRef-1両方の機能を持ち、多くのレトロウイルスに対して防御能を持つことが分かった。
しかし、質疑時に実験系に疑問が持たれた。

田中
 非定型ミコバクテリウム症を引き起こすM.aviumのアメーバを通じた水系感染の危険性に関する論文。
 アメーバは水中や土壌中に広く存在する微生物で、近年はレジオネラの宿主としての研究が盛んである。レジオネラはアメーバ内で増殖し、病原性を増すことが分かっている。
 ミコバクテリウムは細胞内寄生菌であり、マクロファージへの感染向性をもつ。マクロファージはアメーバと多くの点で似ている(ファゴサイトーシス能、リソソームによる殺菌、表面レセプターの類似)
 それで、M.aviumに対してアメーバへの感染等の調査をしてみたところ、M.aviumはアメーバ内空胞でできることがわかった。
 さらに、このアメーバ内のM.aviumはマクロファージへの進入力・増殖力が増しており、発症のリスクが高いことを示した。
この強毒性は一次的なものであり、普通の培地に戻すと普通の菌へと戻った。