山口
 プリオンの株が、アミロイドの構造によって規定されているということを、酵母プリオンを使って確かめた論文。
 酵母の表現形である[PSI+]は、SUP35蛋白質プリオン様に凝集することで伝達される。[PSI+]になるとSUP35が不活化することを利用し、培地上でコロニーの色を観察することによる表現型の強度の判別が可能である。
 本論文では、プリオンシードとなるアミロイドを合成する温度を変えることによって3次元構造の異なるアミロイドを3種類(4℃、23℃、37℃)作成し、[PSI+]の伝達を調べた。
 その結果、4℃で合成したアミロイドを用いると[PSI+]が強度に伝達し、23℃、37℃での伝達は弱いものであることが分かった。また、37℃で伝達させたものを4℃で培養して得られたアミロイドを伝達しても、弱い伝達しか示さず、株の伝達に関して納得できる結果を得た。

庄嶋
 HIV-1 エンベロープ蛋白(膜貫通領域)であるgp41タンパク中の2箇所のシステイン残基が、ウイルス粒子の挙動に与える影響について調べた論文。
 ウイルスの進入に関し、蛋白質のパルミトイル化(パルミチン酸付加)がラフトとの親和性を増し、重要であることが分かっている。パルミトイル化は、システインのみをターゲットとするのだが、HIV-1のgp41内の2箇所のシステインが他の残基に置換した株も5%程だが存在する。そこで、人工的にいくつかの変異体を作出し、自己複製能などの性状を解析した。
 その結果、gp41内のシステインは、エンベロープがラフトに局在することには必要であるが、そのエンベロープへのビリオンの組み込みには必ずしも必用でにことを示した。つまり、ウイルスは少数であるがラフト以外からも放出されている可能性がある。
 またシステインのパルミトイル化は、他の疎水性側鎖で代替可能であることも示された。