山口
 キナクリンのプリオン病治療に関する論文。
 キナクリン(有機カオチンの一つ)はプリオン病治療薬の可能性がある薬物だが、プリオン病治療においては薬剤が血液脳関門(BBB)をうまく通れるかどうかが重要となる。そこでBBBの性質を有するマウス脳内皮内細胞(MBEC4)を膜状に培養し、培地に浸す系を用いて調査を行った。結果、キナクリンはBBBを効率的に通過はしなかった。
 さらに、細胞に薬剤を作用させたり環境を変化させたりして実験を行ったところ、BBBでのキナクリン輸送は、排出系(P-gp)と取込系(有機カオチントランスポーター機構)で調節されていることが分かった。

山岸
 RNAiとウイルスの関係についての論文。
 RNAi(RNA interference)とはもともと線虫などで発見された現象で、細胞内に二本鎖RNAが存在すると、それと相同配列を持つmRNAが分解されるというものである。生体がウイルス防御のためにRNAiを利用しているという説もある。この現象は二本鎖RNAを導入するだけでノックアウトを効率的に誘導できる技術として研究が進んでいる。この導入する二本鎖RNAには長いもの(dsRNA)、短いもの(siRNA)などがあるが、本論文ではmiRNAの研究を行った。
 miRNAは役22bpのRNAで、標的mRNAの分解を起こすか翻訳を抑制することで遺伝子発現を抑制する。このmiRNAが大型のウイルス中に存在することが分かった。EBVウイルスゲノムは5つのmiRNAをコードしている。このmiRNAと相同の配列をもつDNAを広範に検索したところ、生体のアポトーシスを制御する遺伝子(Bcl-2)や腫瘍免疫に関する遺伝子(p53)との相同性が高かった。ウイルスが生体のこれらの遺伝子をノックアウトさせて感染を容易化していると考えるのは興味深いが、証拠は存在しない。